公益財団法人山形県国際交流協会 AIRY

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知らずに傷つけていませんか? ― 意外に気付いていない外国人の気持ち ―

先日、【大阪府国際交流財団】”知ってはりまっか?”マイクロアグレッションというブログ記事を投稿しましたが、この度は機関誌AIRYの過去記事から、当時のCIRと県庁国際室のALTコーディネーターによる座談会の様子をご紹介します。


みなさんそれぞれ山形での生活を楽しんでいらっしゃると思いますが、時には外国人であることで嫌な思いをされることもあると伺いました。

ダニエル スターバックスで知らない人にいきなり「Can I speak to you in English?」と話しかけられて驚いたことがあります。また、歯の治療中に歯医者さんから、「私の娘に英語を教えてもらえますか」と頼まれて困りました。「白人」イコール「英語を話す人」と見られるようで、私は「英語の友達が欲しい」と何度も言われました。また、見た目で「英語しか話せない人」と思われてしまい、店に入ると嫌そうな顔をされることがあります。きっと「私英語できないからどうしよう」とか思っているのでしょう。バスに乗ったときは、誰も私の隣の席に座らないんです。混んでいて仕方なく隣に座っても、他の席が空くと立って移動していきます。そんな経験が何度もありました。

山形は外国人が少ないから、対応の仕方に慣れていないのでしょうか。

ダニエル いえ、東京でも同じです。

キャサリン 以前、京都に住んでいましたが同じです。すごく嫌そうな顔をされました。じろじろ見られるし。

ダニエル そういう経験を日本人の仲間に言うと、「あまり慣れていないからじゃないですか」と正当化しようとする人が多いです。でも、慣れていないからといって、私たちを傷つけてよいわけではありませんよね。

ウォターズさんがイギリスで暮らしていた時はどうでしたか。

ウォターズ 全く同じです。主人の実家は北アイルランドの田舎なので、スーパーのレジで「大丈夫なのこの人」という感じで見られました。日本だけではなくて、夫の実家は 白人だけのところなんですが、どこにでも起こり得ることだとは思いますけど、ない方が心地よいですよね。

日本だけの問題ではないようです。相手の気持ちを思いやる気持ちは大切ですね。

話し合いたいのに

 韓国は隣の国で、韓国が大好きな人も多いのですが、逆に大嫌いな人もたくさんいて、そういう人がその感情を直接私にぶつけてくることがあって、とても困りました。

キャサリン 私も、出前講座に行くと、ツインタワーのことやコロラドでの銃乱射事件のこととかについて、私の気持ちを全く考えないで質問してくる人がいます。異文化のことを知りたい気持ちはわかりますが、他の人の気持ちを思いやることが一番大事ではないですか。本当の国際理解、異文化理解は、ただ知識だけを求めるだけではなく、お互いに心から理解し合いたいという気持ちが必要だということを知ってほしいです。言い方にも気をつけてほしいです。失礼な言い方をされることがあります。

ダニエル 質問の仕方によって、本当に聞きたいという気持ちが入っていないことがあります。「フランスのテロについてどう思いますか」と聞かれたことがあって、どんな答えを期待しているのでしょうかね。でも、実はその人は「フランスは多人種社会だから起きた事件ではないか」という自分の意見を言いたいだけで、私の意見を聞きたいわけではなさそうでした。

 「交流」という言葉は、相互という意味を含んでいるはずなのに、一方的に自分の意見で相手の考えを変えようとする人がいます。私が「そう思いませんね」と言うと、「頑固だな」と怒り出す人もいます。

キャサリン 質問の仕方についても考えないといけません。聞き方によって答えにくいこともあります。

ダニエル 出前講座で「あなたの国についてこれとこれとこれを読みましたが、正しいですか」と何度も聞かれました。でも、なぜそんな聞き方をするのですか?「あのことについて聞きましたが、あなたのわかる範囲で教えていただけますか?」そう聞かれたら「私個人の考えですが…」と答えやすいです。

キャサリン よく聞かれたのが「キャサリンさんは銃を持っていますか」という質問より、「アメリカ人はなぜ解決できないのか」という自分の意見を言いたいだけのようでした。私にも意見はありますけど、聞き方によってはあまり話せなくなってしまいます。

 韓国にいた時からそうなんですが、私が一番嫌いなのは「これ新聞で読んだんだけど」「ニュースで見たんだけど」という言い方です。日本でも韓国でも、メディアが政府寄りで客観的な事実とかけ離れていることがあるのに、それだけを見てそれが正しいと決めつけて、それを私に押し付けてくる人がいます。そうではなくて、「それを見たんだけど、私の意見はこうだけどどうですか」みたいに、自分の考えを持つことも大事かなと思います。私はもっと話し合える場が欲しいんですが、追いつめられて怖い思いをすることが多いです。

イギリス出身CIR
ダニエル ブルックスさん
アメリカ出身CIR
キャサリン スウイナーさん
中国出身CIR
顧 穎周さん
韓国出身CIR
朴 美貞さん
ALTコーディネーター
ウォターズ 真紀さん

おもてなしについて

ダニエル オリンピック招致で「おもてなし」という言葉が話題になりましたが、私は、日本のサービスには柔軟性が欠けているのではないかと感じています。ある喫茶店で紅茶を注文した時、コーヒーフレッシュが付いてきて、本当の牛乳が欲しいと言ったら、店員は「ないです」と答えました。でも冷蔵庫に入っているのを私は見ていて、そのことを伝えると、「あれはカプチーノの材料だから出せません」と断わられました。

おいしい料理をたくさんそろえることがおもてなしだと思われているのかもしれませんが、宗教や好みといったことによって選択することができなければ、たくさんの外国人が日本に来ると困ることになると思います。

 日本人が思っている「おもてなし」は、「いいことをしてあげているから喜んでください」みたいなところがあるのではないですか。本当の優しさは、相手が困っている事を察してあげたり、相手が喜ぶことをしてあげることで、基準は相手の立場になるべきだと思うのですが。いくらおいしい食べ物でも、食べられない人もいるわけで、「せっかく出してあげたのになぜ食べない」と責めるのは違うと思います。

文化の違いについて

顧 実は文化の違いによって、いろいろ困ることがあります。

日本人に嫌がられるのが「中国人の大声」です。確かに大声ですが、これも中国の文化の一つで、小学校の頃から、「大きくて響く声で読むように」と教えられます。それに、人が多くて、町もうるさくて、大きい声でないと全然聞こえないという理由もあります。 

CIRの友人の話ですが、東京駅の前で電話していたら、隣のおばさんに「声が大きくて、びっくりして死ぬかと思った」と、すごく怒られたそうです。「そんなに大声でないのに」と、泣きたくなったと話してくれました。いろんな文化の違いで困ることが出てきます。

キャサリン 私の文化と日本の文化の違いについて話し合うと、「それはよい」「それは悪い」と言う人がいますが、「よい」か「悪い」かではなく、ただ違うということを理解してほしいです。

ウォターズさんは、イギリス人のご主人と山形で暮らされていますが、ご主人が外国人という立場からどう思われますか。

ウォターズ みなさんの話は、いろんな人からよく聞くことでした。私の夫はほとんど英語だけで生活していますが、皆さんのような体験をさせないように、私が先回りして、彼が嫌な気持ちにならないようにしています。今までは自分がそうしている自覚はなかったんですが、今思うとそうだったんだなあと思います。

ダニエル 外国の文化と日本の文化の両方を理解している日本人が少ないと思います。文化が違うというのはわかっていても、日本の文化についてはっきり説明してもらうことがあまりなくて、ただ「日本の文化だから」とか「郷に入れば郷に従え」、それだけ言われても納得できません。

不思議なことに、自分の文化についてあまり詳しくない人が多いように思います。和食や富士山がユネスコの世界遺産とか、そういった日本についての豆知識はあるのに、日本の文化について上手に説明することができる人が少ないです。

普通に接してほしい

日本を訪れる外国人観光客が過去最高になりました(2016年当時)が、受け入れる私たちはどんなことに気を付けたらいいでしょう。

キャサリン もし、どうしたらいいかわからないときは 少なくとも特別な扱いをしないでほしいです。同じ日本人だったらどうするかを想像して、そのようにしてほしいです。

外国人が店に入ってきても、「英語しか話せないのかも」という顔をしないで、日本語を少し話せる外国人も多いのだから、普通に対応してください。

ダニエル 外国人の観光客がある店に入って、温かく歓迎され、言葉の問題関係なく丁寧にやさしく対応してもらえたら、口コミで評判が広まります。実際、山形でも、外国人に人気のある店は常連の外国人がたくさん集まります。おいしいかどうかよりも、「英語のメニューがあって、ベジタリアンにやさしい」といった情報はすぐに広まります。

キャサリン 「英語のメニュー」とか「アレルギー対応」とか、そういう特別なことでなくても、普通に対応しただけで人気が出ます。例えばある店に行くと、レジの人がすごく優しくて、私が近づいても驚かないとかね。

いかがでしたか。悪気はなくても、実はとても失礼なことをしていたのかもしれないと反省させられます。「国際交流」をする上でも、やはり一番大切なのは「相手を思いやる心」。これからさらに多くの外国人が山形を訪れると思います。「情報の多言語化」などハード面での整備も進んでいくと思いますが、まずは私たち一人ひとりが思いやりの気持ちを持って接すること、これを実践することから始めてみませんか。